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傘と黒板
1997/03/26

 雨が降っていた。
 そんな憂鬱な朝、僕は学校に向かって歩いていた。ひどい雨降りで、傘を差していなければびしょぬれになる。
 傘を差して歩いていた。傘に当たる雨の音がうるさかったけど。

 そんな日の一限目。僕は「微分積分及び演習」の授業を受けなければならなくて、雨で少ししめった鞄からノートとテキストを用意した。この授業は、僕の専門科目でとりわけ真面目に受けなくちゃならない授業だった。
 先生が入ってきて、授業が始まる。僕らの雑談はここで終わって、授業を受けるためにノートを開いた。眠気をさそう先生の言葉と、黒板にチョークの当たる音が教室中に響いた。今日はいつもより、黒板の音がうるさかった。その音のうるささに比例して、僕の手の疲労は大きくなる。だって、ノートを取る分量が多くなるから。僕の手の疲労感覚は限界に達した、と同時に黒板の広さも限界に達した。黒板に入りきらないたくさんの文字、そんなにたくさん書けば僕の手は限界まで疲労するに決まってる。じゃあ、黒板に入らなかったその文字は何処に行くんだ。って、そんなこと考えていると、結論を思いつく前に結論に達した。その文字達は、教室中に降り出した。窓の外を降る雨と同じように土砂降りに。

 文字が降っていた。
 そんな憂鬱な授業、僕はノートを取り続けていた。ひどい文字降りで、傘を差していなければびしょぬれになるのか?
 傘を差して授業を受けていた。傘に当たる文字の音がうるさかったけど。




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